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無線LANのすべてがわかる!基本から応用まで徹底解説

私たちの生活にすっかり溶け込んでいる「無線LAN」。スマートフォンやパソコン、ゲーム機、さらにはスマート家電まで、今や無線LAN、いわゆる「Wi-Fi(ワイファイ)」なしの生活は考えられない、という方も多いのではないでしょうか。

でも、「なんとなく使っているけど、実はよくわかっていない…」「最近、なんだか接続が不安定…」「新しいルーターを選びたいけど、専門用語が難しくて何を見ればいいのかサッパリ…」なんてお悩み、ありませんか?

この記事は、そんなあなたのための無線LAN・Wi-Fiの完全ガイドです。一番の特徴は、特定の商品を一切紹介しないこと。「この商品がおすすめです!」といったランキングやレビューは載せません。その代わり、無線LANの仕組みといった基本的な知識から、通信速度を改善するための実践的なテクニック、そして見落としがちなセキュリティ対策まで、純粋な「お役立ち情報」だけを、どこよりも詳しく、そしてわかりやすく解説していきます。

この記事を最後まで読めば、あなたはもう「なんとなく」Wi-Fiを使うユーザーから卒業です。無線LANの仕組みを理解し、トラブルにも自分で対処できるようになり、将来ご自身で最適な環境を選ぶための確かな知識が身につくはず。さあ、一緒に無線LANの世界を深く探検してみましょう!

  1. 第1章:無線LANの超基本!「Wi-Fi」って一体なに?
    1. 無線LANとWi-Fiの違い
    2. 無線LANの仕組みをざっくり解説
    3. 有線LANとの違いは?メリット・デメリット
      1. 有線LANのメリット・デメリット
      2. 無線LANのメリット・デメリット
  2. 第2章:無線LANの「規格」を理解しよう!速度と安定性のカギ
    1. Wi-Fi規格って何?なぜ重要?
    2. 歴代のWi-Fi規格を振り返る
      1. Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)
      2. Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)
      3. Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
      4. Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)
      5. Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)
    3. 周波数帯(2.4GHz / 5GHz / 6GHz)の違いを徹底解説
      1. 2.4GHz帯の特徴
      2. 5GHz帯の特徴
      3. 6GHz帯の特徴(Wi-Fi 6E/7で利用可能)
  3. 第3章:快適な無線LAN環境を構築するための重要知識
    1. 無線LANルーターの役割とは?
    2. アンテナの数と「MIMO」「MU-MIMO」
    3. 「ビームフォーミング」ってどんな技術?
    4. 「メッシュWi-Fi」で死角をなくそう
  4. 第4章:自分でできる!無線LANの速度が遅い・不安定なときの対処法
    1. まずは基本の再起動から
    2. 無線LANルーターの設置場所を見直す
    3. 接続する周波数帯を変更してみる
    4. チャンネルの変更を試す
    5. ファームウェアを更新する
    6. それでも改善しない場合は?
  5. 第5章:超重要!無線LANのセキュリティ対策
    1. なぜセキュリティ対策が必要なのか?
    2. 暗号化方式の種類と選び方
    3. 今すぐできるセキュリティ強化策
      1. パスワード(暗号化キー)を複雑にする
      2. 管理者パスワードを変更する
      3. SSIDステルス機能は気休め?
      4. MACアドレスフィルタリング
      5. ファームウェアを常に最新に保つ
  6. 第6章:無線LANルーターの「選び方」の考え方
    1. 【注意】この記事では特定の商品をおすすめしません!
    2. STEP1:利用環境を把握する
    3. STEP2:接続する機器の台数と種類を考える
    4. STEP3:契約しているインターネット回線の速度を確認する
    5. STEP4:必要なWi-Fi規格を決める
    6. STEP5:必要な機能をチェックする
    7. 【まとめ】選び方のチェックリスト
  7. まとめ

第1章:無線LANの超基本!「Wi-Fi」って一体なに?

まずは基本中の基本からおさらいしていきましょう。「無線LAN」と「Wi-Fi」、普段何気なく使っているこの言葉ですが、厳密には少しだけ意味が違うってご存知でしたか?この章では、そんな言葉の定義から、無線LANがどうやって私たちのデバイスをインターネットに繋いでいるのか、その仕組みをざっくりと解説します。

無線LANとWi-Fiの違い

結論から言ってしまうと、現代においては「無線LAN」と「Wi-Fi」はほぼ同じ意味で使われています。ですが、成り立ちを知っておくと、ちょっとだけ物知りになれるかもしれません。

「無線LAN(Wireless Local Area Network)」とは、その名の通り「無線で通信する、限定された範囲のネットワーク」という技術そのものを指す、広い意味の言葉です。ケーブルを使わずに、電波でデータをやり取りする技術全般がこれにあたります。

一方、「Wi-Fi(ワイファイ)」は、「Wi-Fi Alliance」という業界団体が定めた、無線LANの国際標準規格のひとつです。昔は、同じ無線LAN製品でもメーカーが違うと繋がらない、なんてことがありました。それでは不便だ!ということで、「この基準(規格)をクリアした製品なら、メーカーが違ってもちゃんと繋がりますよ」ということを保証するブランド名として「Wi-Fi」が登場したのです。

このWi-Fiがあまりにも普及したため、今では「無線LAN=Wi-Fi」という認識が一般的になりました。ですから、会話の中で「うちのWi-Fiがさ〜」と言えば、それは無線LANのことを指していると思って間違いありません。

無線LANの仕組みをざっくり解説

では、どうやってスマホやパソコンはインターネットに繋がっているのでしょうか。その道のりを、水の流れに例えて簡単に見てみましょう。

まず、電力会社や水道局のような「大元」から、私たちの家にインターネット回線(光回線など)が引き込まれています。これが一番太い水道管のようなものです。

  1. インターネット回線:世界中と繋がっている巨大な情報の川。
  2. ONU(光回線終端装置)やモデム:家の外から来た情報の川(光信号など)を、家の中で使える形(デジタル信号)に変換する「浄水場」のような役割を担う機器です。
  3. 無線LANルーター(Wi-Fiルーター):この章の主役です。浄水場から来た水を、家の中の複数のお風呂やキッチン、洗面台へ分配する「分配器」兼「蛇口」の役割を果たします。このルーターが、インターネットの信号を「電波」というシャワーに変えて、家中に飛ばしてくれます。
  4. スマートフォンやパソコン:家中に飛んでいる電波のシャワーを浴びて、インターネットという水を利用できる、私たち自身というわけです。

つまり、無線LANルーターは、1本のインターネット回線を、家にあるたくさんの機器で同時に使えるように分け合い、電波で届けてくれる、非常に重要な役割を担っているのです。

有線LANとの違いは?メリット・デメリット

無線LANが登場する前は、「有線LAN」が主流でした。これは、LANケーブルという線でルーターとパソコンを直接つなぐ方法です。今でも使われるこの有線LANと、無線LANにはそれぞれ得意なこと、苦手なことがあります。両方の特徴を知っておくと、より快適なネットワーク環境を構築できますよ。

有線LANのメリット・デメリット

メリット

  • 通信が非常に安定している:物理的なケーブルで繋がっているため、電波の干渉や障害物の影響を受けません。
  • 通信速度が速い:データのロスが少なく、回線の性能を最大限に引き出しやすいです。オンラインゲームや大容量データのダウンロードなど、一瞬の遅れも許されない場面で強みを発揮します。
  • セキュリティが高い:物理的に接続しないとネットワークに入れないため、電波を盗まれるといったリスクがありません。

デメリット

  • ケーブルが邪魔:配線がごちゃごちゃしたり、見た目が悪くなったりします。足を引っ掛けてしまう危険も。
  • 接続場所が限られる:LANケーブルが届く範囲でしか使えません。家のどこでも、というわけにはいきません。
  • 接続できる機器が少ない:スマートフォンやタブレットなど、そもそもLANポートがない機器では利用できません。

無線LANのメリット・デメリット

メリット

  • ケーブル不要でスッキリ:なんといっても最大のメリット。配線がなく、部屋のどこにでも機器を置けます。
  • 複数台の機器を同時に接続:スマホ、PC、タブレット、ゲーム機、テレビ、スマート家電など、たくさんの機器を同時にインターネットに繋げます。
  • 家中どこでも使える:電波の届く範囲であれば、リビングでも寝室でも書斎でも、好きな場所でインターネットを楽しめます。

デメリット

  • 通信が不安定になることがある:壁や家具などの障害物、電子レンジなどの家電製品が出す電波の影響を受けて、通信が途切れたり遅くなったりすることがあります。
  • 通信速度が落ちることがある:有線LANに比べると、通信速度は環境に左右されやすくなります。
  • セキュリティ対策が必須:電波は家の外にも漏れる可能性があるため、第三者に不正利用されたり、通信内容を盗み見られたりするリスクがあります。そのため、しっかりとしたセキュリティ設定が不可欠です。

それぞれの特徴をまとめたのが以下の表です。

項目 無線LAN (Wi-Fi) 有線LAN
通信の安定性 △(環境に左右される) ◎(非常に安定)
通信速度 ○(環境によるが高速) ◎(非常に高速)
利便性(場所の自由度) ◎(非常に高い) ×(ケーブルの範囲のみ)
同時接続台数 ◎(多い) △(ポートの数に依存)
導入の手軽さ ○(パスワード入力など) △(ケーブルの配線が必要)
セキュリティ △(対策が必須) ◎(物理的に安全)

このように、どちらが良い・悪いというわけではなく、用途に応じて使い分けるのが賢い方法です。例えば、「絶対に通信を途切れさせたくないデスクトップPCでのオンライン会議やゲームは有線LAN」、「家中を移動しながら使うスマートフォンやノートPCは無線LAN」といった使い分けが理想的と言えるでしょう。

第2章:無線LANの「規格」を理解しよう!速度と安定性のカギ

無線LAN(Wi-Fi)の世界には、「規格(きかく)」というルールが存在します。この規格こそが、通信の速さや安定性を決める重要な要素。車の世界で、普通自動車や軽自動車、ハイブリッド車など、さまざまな種類があるのと同じように、Wi-Fiにも世代や特徴の異なる規格があるのです。この章では、ちょっと専門的に聞こえる「規格」について、誰にでもわかるように噛み砕いて解説します。

Wi-Fi規格って何?なぜ重要?

Wi-Fiの技術は、日進月歩で進化しています。より速く、より安定して、より多くの機器を同時に繋げられるように、新しい技術が次々と開発されているのです。その技術的な仕様を定めたものが「通信規格」です。

正式には「IEEE(アイトリプルイー) 802.11(はちまるに てん いちいち)」という、なんだか難しそうな名前がついています。そして、その後ろに「n」や「ac」、「ax」といったアルファベットが続くことで、どの世代の規格かを示しています。

でも、こんなの覚えられませんよね?そこで、最近ではもっと分かりやすいように、世代番号を使った呼び方が主流になっています。それが「Wi-Fi 4」「Wi-Fi 5」「Wi-Fi 6」といった名称です。数字が大きくなるほど、新しくて高性能な規格である、と覚えておけばOKです。とってもシンプルになりましたね!

なぜこの規格が重要かというと、無線LANルーター側と、それを使うスマートフォンやパソコン側の両方が同じ規格に対応していないと、その規格の性能を最大限に発揮できないからです。例えば、最新の「Wi-Fi 6」に対応した超高性能なルーターを買っても、お使いのスマホが古い「Wi-Fi 4」にしか対応していなければ、通信は「Wi-Fi 4」の速度と性能で行われてしまいます。これは非常にもったいないですよね。だからこそ、規格を理解することが大切なのです。

歴代のWi-Fi規格を振り返る

ここでは、現在主流で使われている、またはこれから主流になる規格を中心に、その特徴を見ていきましょう。

以下の表は、各規格の主な違いをまとめたものです。「最大通信速度」はあくまで理論上の最高値で、実際の速度は環境によって大きく変わる点にご注意ください。

世代名称 規格名 (IEEE 802.11) 登場時期の目安 最大通信速度(理論値) 利用する周波数帯
Wi-Fi 4 11n 2009年 600 Mbps 2.4GHz / 5GHz
Wi-Fi 5 11ac 2013年 6.9 Gbps 5GHz
Wi-Fi 6 11ax 2019年 9.6 Gbps 2.4GHz / 5GHz
Wi-Fi 6E 11ax 2021年 9.6 Gbps 2.4GHz / 5GHz / 6GHz
Wi-Fi 7 11be 2024年以降 46 Gbps 2.4GHz / 5GHz / 6GHz

Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)

一世代前の規格ですが、まだまだ現役で使われている場面も多いです。初めて2.4GHz帯と5GHz帯の両方の周波数帯に対応し、通信速度もそれまでの規格から飛躍的に向上しました。少し古いスマートフォンやゲーム機(ニンテンドー3DSなど)では、この規格が上限となっていることもあります。

Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)

数年前まで最も主流だった規格で、現在でも多くの家庭で使われています。5GHz帯の通信に特化することで、高速化を実現しました。Wi-Fi 4に比べて大幅にスピードアップし、動画視聴などがより快適になりました。現在市販されている多くのスマートフォンやパソコンが、少なくともこの規格には対応しています。

Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)

現在の主流となっている高性能な規格です。最大通信速度が向上したことはもちろんですが、Wi-Fi 6の真価は「たくさんの機器を同時に接続しても速度が落ちにくい」という点にあります。後述する「OFDMA」という技術により、通信の効率が劇的に改善されました。スマホ、PC、タブレット、スマート家電…と、Wi-Fiに繋ぐ機器が増え続ける現代のライフスタイルにマッチした規格と言えます。

Wi-Fi 6E(IEEE 802.11ax)

Wi-Fi 6の拡張版です。「E」は「Extension(拡張)」を意味します。基本的な性能はWi-Fi 6と同じですが、大きな違いは「6GHz」という新しい周波数帯が使えるようになったことです。従来の2.4GHzや5GHz帯が混雑した道路だとすると、6GHz帯はまだ誰も走っていないピカピカの高速道路のようなもの。電波干渉が極めて少なく、非常に高速で安定した通信が期待できます。

Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)

これからのスタンダードとなる次世代規格です。Wi-Fi 6/6Eをさらに進化させ、最大通信速度は驚異の46Gbpsと、もはや有線LANを凌駕するレベルに達する可能性を秘めています。複数の周波数帯を束ねて同時に通信する「MLO(Multi-Link Operation)」といった新技術により、さらなる高速化と低遅延(タイムラグの減少)を実現します。VR/ARコンテンツや8K動画のストリーミングなど、未来のサービスを見据えた規格です。

周波数帯(2.4GHz / 5GHz / 6GHz)の違いを徹底解説

Wi-Fiの規格で何度も出てきた「周波数帯」という言葉。これは電波の通る「道」のようなもので、それぞれに得意なことと苦手なことがあります。車の運転で、一般道と高速道路を使い分けるように、Wi-Fiもこの周波数帯の特性を理解して使い分けることで、より快適になります。

2.4GHz帯の特徴

昔から使われている、いわば「一般道」です。

メリット

  • 障害物に強い:電波は周波数が低いほど、壁や床、家具といった障害物を回り込んで進む性質があります。そのため、ルーターから離れた部屋や、階が違う場所にも電波が届きやすいのが特徴です。
  • 対応機器が多い:古い機器も含め、ほとんどのWi-Fi対応機器がこの2.4GHz帯を利用できます。

デメリット

  • 電波干渉を受けやすい:2.4GHz帯は、Wi-Fiだけでなく、電子レンジやコードレス電話、Bluetooth機器(イヤホンやマウスなど)も利用する、非常に混雑した周波数帯です。近所の家のWi-Fi電波とも干渉しやすく、これが原因で通信が不安定になったり、速度が低下したりすることがよくあります。
  • 通信速度が比較的遅い:道幅が狭いため、一度に運べるデータの量が少なく、速度の上限は5GHz帯や6GHz帯に劣ります。

5GHz帯の特徴

Wi-Fi 5から本格的に普及した、いわば「高速道路」です。

メリット

  • 通信速度が速い:道幅が広く、一度にたくさんのデータを運べるため、非常に高速な通信が可能です。高画質な動画のストリーミングやオンラインゲームに適しています。
  • 電波干渉が少ない:利用する家電製品が少なく、Wi-Fi専用で使える帯域が多いため、他の電波からの干渉を受けにくく、通信が安定しやすいです。

デメリット

  • 障害物に弱い:電波の性質上、直進性が強く、壁や床などの障害物にぶつかると減衰(弱まる)しやすいです。ルーターを置いている部屋から離れると、急に電波が弱くなったり、繋がらなくなったりすることがあります。

6GHz帯の特徴(Wi-Fi 6E/7で利用可能)

新しく開通した「超特急専用レーン」のような存在です。

メリット

  • 非常に高速で低遅延:利用できる道幅が5GHz帯よりもさらに広く、現時点では利用者がほとんどいないため、電波干渉の心配がほぼありません。Wi-Fi 6E/7のポテンシャルを最大限に引き出し、極めて快適な通信環境が期待できます。
  • セキュリティが高い:最新の暗号化方式である「WPA3」が必須となっているため、安全性が確保されています。

デメリット

  • 障害物に最も弱い:5GHz帯よりもさらに直進性が強く、障害物の影響を最も受けやすいです。ルーターとの間に遮蔽物がない、比較的近い距離での利用が前提となります。
  • 対応機器がまだ少ない:利用するには、ルーターとデバイス(スマホやPC)の両方がWi-Fi 6EまたはWi-Fi 7に対応している必要があります。

【使い分けのコツ】
多くの無線LANルーターでは、2.4GHz帯と5GHz帯の電波を同時に出しており、それぞれに異なる名前(SSID)がついています(例:「MyWifi-G-XXXX」「MyWifi-A-XXXX」など)。一般的に「G」が2.4GHz、「A」が5GHzを示します。この2つを、利用シーンに応じて手動で切り替えるのがおすすめです。

  • 動画視聴やオンラインゲームなど、速度を重視する場合 → 5GHz帯(または6GHz帯)に接続する。
  • ルーターから離れた寝室や書斎で使う場合 → 2.4GHz帯に接続する。
  • Webサイトの閲覧やSNSなど、普段使いの場合 → 電波が安定している方を選ぶ。

このように、電波の特性を理解して上手に使い分けるだけで、Wi-Fiの快適性は格段に向上しますよ。

第3章:快適な無線LAN環境を構築するための重要知識

無線LANルーターの箱や説明書を見ると、「MU-MIMO」や「ビームフォーミング」といった、何やら難しそうな言葉が並んでいますよね。これらは、Wi-Fiをより速く、より快適にするための重要な技術です。この章では、そうした無線LANの付加機能について、それぞれの役割とメリットをわかりやすく解説します。これらを理解すれば、ご自身の環境にどんな機能が必要かが見えてきますよ。

無線LANルーターの役割とは?

第1章でも触れましたが、無線LANルーターの役割は単に電波を飛ばすだけではありません。その名の通り「ルーター(Router)」機能が中核を担っています。

ルーターとは、異なるネットワーク同士を繋ぎ、データの通り道(ルート)を決定する「交通整理員」のような存在です。家庭内では、インターネットという「外部のネットワーク」と、スマートフォンやパソコンなどで構成される「家庭内のネットワーク(LAN)」を繋ぐ役割を果たします。

もしルーターがなければ、インターネット回線に接続できる機器は1台だけになってしまいます。ルーターが、1本のインターネット回線を家庭内の複数の機器で共有できるように、データの宛先を判断し、適切に振り分けてくれているのです。まさに、快適なインターネットライフの司令塔と言えるでしょう。

アンテナの数と「MIMO」「MU-MIMO」

無線LANルーターには、外付けのアンテナが何本も立っているものや、アンテナが内蔵されていてスッキリしたデザインのものがあります。このアンテナの数は、通信の速度と安定性に大きく関わっています。

そこで重要になるのが「MIMO(マイモ)」という技術です。MIMOは「Multiple-Input Multiple-Output」の略で、日本語にすると「多重入力・多重出力」。送信側(ルーター)と受信側(スマホなど)の両方で複数のアンテナを使い、データを分割して同時に送受信する技術です。

道路に例えるなら、1車線の道路を、2車線、3車線と増やすようなイメージ。車線が増えれば、それだけ多くの車(データ)が同時に通れるようになり、結果として通信速度が向上します。これがMIMOの基本的な仕組みです。

そして、MIMOをさらに進化させたのが「MU-MIMO(マルチユーザーマイモ)」です。

従来のMIMOは、一度に通信できる相手が1台だけでした(シングルユーザーMIMO)。複数のスマホやPCが同時に通信しようとすると、ルーターは高速で通信相手を切り替えながら、順番に対応していました。一見同時に通信しているように見えても、実は順番待ちが発生していたのです。

一方、MU-MIMOは、複数のアンテナを使い、複数の相手(ユーザー)と同時に通信することができます。これは、レジが一つしかないスーパーから、複数のレジがあるスーパーに進化したようなものです。家族それぞれがスマホで動画を見たり、オンラインゲームをしたりしても、順番待ちが解消され、速度の低下が起こりにくくなります。

さらに、Wi-Fi 6で登場した「OFDMA(直交周波数分割多元接続)」は、MU-MIMOをさらに効率化した技術です。MU-MIMOが「相乗りトラック(複数の荷物を一人の宛先に届ける)」だとすれば、OFDMAは「宅配便のトラック」に例えられます。一台のトラックに、複数の宛先への小さな荷物をたくさん積み込んで、一度に効率よく配送するイメージです。これにより、データ量の少ない通信(SNSの通知やスマート家電の通信など)が大量に発生しても、ネットワーク全体の遅延が大幅に減少し、より多くの機器が快適に通信できるようになりました。

「ビームフォーミング」ってどんな技術?

従来の無線LANルーターは、アンテナを中心に、電波を全方向へ均等に飛ばしていました。これは、部屋の真ん中に置いた裸電球が、部屋全体をぼんやりと照らすのに似ています。これだと、Wi-Fiを使いたい端末がない方向にも無駄な電波が飛んでしまい、肝心の端末がある場所には十分な強さの電波が届かないことがありました。

そこで登場したのが「ビームフォーミング」という技術です。これは、Wi-Fiに接続しているスマートフォンやパソコンの位置を特定し、そこを狙い撃ちするように電波を集中させて届ける技術です。まるで、スポットライトが特定の人を追いかけて照らすようなイメージです。

この技術により、以下のようなメリットが生まれます。

  • 通信の安定性向上:端末に集中的に電波を送るため、電波強度が上がり、通信が安定します。
  • 通信速度の向上:電波のロスが減るため、実効速度が向上しやすくなります。
  • 通信範囲の拡大:これまで電波が届きにくかった、ルーターから少し離れた場所でも、繋がりやすくなる効果が期待できます。

なお、このビームフォーミングの効果を最大限に発揮するには、ルーター側だけでなく、受信するスマートフォンやパソコン側もこの技術に対応している必要があります。最近の多くの機器は対応していますが、念のため覚えておくと良いでしょう。

「メッシュWi-Fi」で死角をなくそう

「リビングは快適なのに、2階の寝室や書斎に行くとWi-Fiがすごく遅くなる…」「鉄筋コンクリートのマンションで、隣の部屋に行くだけで電波が弱まる…」そんなお悩みはありませんか?これは、1台の無線LANルーターだけでは、家全体をカバーしきれていない「Wi-Fiの死角」が原因です。

この問題を解決する強力な方法が「メッシュWi-Fi」です。

メッシュWi-Fiは、メインとなるルーター(親機)と、複数のサテライトルーター(子機)を組み合わせて使います。これらのルーター同士が連携し、家全体に網目(メッシュ)のようにWi-Fiネットワークを張り巡らせます。

従来、電波を拡張する方法として「中継機」がありましたが、メッシュWi-Fiはそれとは一線を画す、よりスマートな技術です。

中継機との違い

  • 最適な接続先への自動切り替え:中継機の場合、スマホなどの端末は一度掴んだ電波(親機または中継機)を、弱くなってもなかなか手放そうとしません。そのため、移動すると不安定になることがありました。一方、メッシュWi-Fiは、家の中を移動しても、端末にとって最も電波状態の良いルーター(親機または子機)に自動的かつシームレスに接続を切り替えてくれます。
  • ネットワーク名(SSID)がひとつ:中継機では親機と中継機でネットワーク名が別々になることがありましたが、メッシュWi-Fiでは家全体でネットワーク名がひとつなので、接続先をいちいち切り替える手間がかかりません。
  • 効率的な通信経路:サテライトルーター同士も連携するため、どこか1台の電波状況が悪くなっても、別の経路を使って通信を維持できます。これにより、ネットワーク全体の安定性が向上します。

メッシュWi-Fiは、特に以下のような環境で大きな効果を発揮します。

  • 3階建て以上の戸建て住宅
  • 壁が多い、または鉄筋コンクリート造のマンション
  • 部屋数の多い広い家
  • 離れやガレージなど、母屋から離れた場所でもWi-Fiを使いたい場合

導入コストは少し高くなる傾向がありますが、家のどこにいても快適なWi-Fi環境を手に入れたい場合には、非常に有力な選択肢となります。

第4章:自分でできる!無線LANの速度が遅い・不安定なときの対処法

快適なはずの無線LANが、突然遅くなったり、プツプツ切れたりすると、本当にストレスが溜まりますよね。でも、専門業者を呼んだり、新しいルーターに買い替えたりする前に、自分で試せる対処法がたくさんあります。実は、簡単なことであっさり解決することも少なくありません。この章では、誰でもすぐに試せるトラブルシューティングの方法を、基本から順に紹介していきます。

まずは基本の再起動から

「パソコンの調子が悪かったら、まず再起動」というのはよく言われることですが、これは無線LANルーターや、それに繋がる機器にも当てはまります。最も手軽で、そして最も効果が期待できる対処法のひとつが「再起動」です。

無線LANルーターは24時間365日、休まず働き続けている小さなコンピューターです。長時間稼働していると、内部に熱がこもったり、小さなエラーが蓄積されたりして、動作が不安定になることがあります。再起動することで、こうした内部の状態がリフレッシュされ、問題が解決することが多いのです。

正しい再起動の手順は以下の通りです。

  1. 接続端末(スマホ、PCなど)をシャットダウンする:可能であれば、まずWi-Fiに繋いでいる機器の電源をオフにします。
  2. 無線LANルーターの電源を抜く:本体の電源ボタンではなく、ACアダプターをコンセントから抜くのが確実です。
  3. 3. ONUやモデムの電源も抜く:ルーターだけでなく、その手前にあるインターネット回線の大元である機器(ONUやモデム)の電源も抜きましょう。

  4. 5分ほど待つ:すぐに電源を入れ直すのではなく、数分間放置するのがポイントです。これにより、機器内部の電気が完全に放電され、設定がリセットされます。
  5. ONU/モデム → ルーターの順に電源を入れる:ここが重要です!必ずインターネット回線に近いONUやモデムから先に電源を入れ、ランプの点灯状態が落ち着くのを待ちます(1〜2分程度)。その後、無線LANルーターのACアダプターをコンセントに差し込み、こちらもランプの状態が安定するまで待ちます。
  6. 接続端末の電源を入れる:最後に、スマートフォンやパソコンの電源を入れ、Wi-Fiに接続できるか確認します。

この手順で再起動するだけで、多くの「なんだか遅い」「繋がらない」といった症状が改善される可能性があります。まずは落ち着いて、この方法を試してみてください。

無線LANルーターの設置場所を見直す

無線LANの電波は、目に見えないだけに、その特性を忘れがちです。電波は、ルーターを中心に球状に広がっていきますが、障害物や他の電波の影響を非常に受けやすい、デリケートなもの。ルーターの置き場所ひとつで、通信状況は劇的に変わります。

もしルーターを部屋の隅や棚の奥、床の上などに置いているなら、今すぐ見直してみましょう。

理想的な設置場所

  • 家の中心付近:家全体にまんべんなく電波を届けるため、できるだけ家の真ん中に近い場所が理想です。
  • 床から1〜2メートルの高さ:電波は床や壁で反射・吸収されます。床に直置きすると、電波がうまく広がりません。少し高さのある棚の上などが適しています。
  • 周りに物がない、開けた場所:ルーターの周りを物で囲んでしまうと、電波が遮られてしまいます。できるだけスッキリした場所に置きましょう。

避けるべき設置場所

  • 部屋の隅や窓際:電波の半分が家の外に逃げてしまい、無駄が多くなります。
  • 床の上:ホコリを吸い込みやすく、家具などに遮られて電波が広がりにくいです。
  • テレビや金属製の棚、キャビネットの中:テレビ自身も電波を発しますし、金属は電波を反射・吸収してしまうため、著しく通信品質が低下する原因になります。
  • 水槽や花瓶の近く:水は電波を吸収する性質が非常に強いです。水槽の近くは絶対に避けましょう。
  • 電子レンジ、コードレス電話の近く:これらはWi-Fiの2.4GHz帯と同じ周波数帯の電波を使っているため、使用中に強力な電波干渉を引き起こし、Wi-Fiが切断される原因になります。

少し置き場所を変えるだけで、今まで届きにくかった部屋にも電波が届くようになるかもしれません。ぜひ一度、ご自宅のルーターの置き場所をチェックしてみてください。

接続する周波数帯を変更してみる

第2章で解説した通り、Wi-Fiには主に「2.4GHz」と「5GHz」という2つの周波数帯があります。もしどちらか一方に繋いでいて調子が悪いなら、もう一方に切り替えてみるだけで、状況が改善することがよくあります。

例えば、電子レンジを使ったらWi-Fiが切れる、という場合は、2.4GHz帯が干渉を受けている可能性が高いです。この場合、接続先を5GHz帯に切り替えることで、干渉を避けて安定した通信ができるようになります。

逆に、ルーターから離れた部屋で5GHz帯に繋いでいて不安定な場合は、障害物に強い2.4GHz帯に切り替えることで、電波が届きやすくなり、通信が安定する可能性があります。

スマートフォンのWi-Fi設定画面を開くと、「MyWifi-G-XXXX」と「MyWifi-A-XXXX」のように、似た名前のネットワーク(SSID)が2つ表示されていることが多いです。これを切り替えてみて、どちらが快適に使えるか試してみましょう。

チャンネルの変更を試す

周波数帯という大きな「道路」の中には、さらにいくつかの「車線(チャンネル)」が用意されています。同じ周波数帯でも、このチャンネルが近隣の家で使っているWi-Fiと重複していると、「チャンネルの渋滞」が起こり、速度低下や不安定化の原因になります。

特にマンションやアパートなどの集合住宅では、たくさんのWi-Fi電波が飛び交っているため、チャンネルの重複が起こりがちです。

多くの無線LANルーターは、電源を入れたときに自動的に空いているチャンネルを選択する機能(オートチャンネルセレクト)を持っています。そのため、一度ルーターを再起動するだけで、より空いているチャンネルに切り替わって問題が解決することもあります。

もし再起動しても改善しない場合は、ルーターの設定画面から手動でチャンネルを変更してみるのも一つの手です。2.4GHz帯では、他のチャンネルと干渉しにくい「1ch」「6ch」「11ch」のいずれかに設定するのが良いとされています。5GHz帯はチャンネル数が多く、干渉しにくいですが、もし変更するならW52と呼ばれる帯域(36, 40, 44, 48ch)の中から試してみると良いでしょう。設定方法はルーターの取扱説明書を確認してみてください。

ファームウェアを更新する

無線LANルーターを制御している基本ソフトウェアのことを「ファームウェア」と呼びます。メーカーは、製品の発売後も、性能を改善したり、新しい機能を追加したり、セキュリティ上の問題点(脆弱性)を修正したりするために、このファームウェアの更新プログラムを定期的に提供しています。

ファームウェアが古いままになっていると、ルーターの性能が最大限に発揮されなかったり、セキュリティ上のリスクを抱えたままになったりする可能性があります。通信の不安定さが、ファームウェアを最新版に更新することで解決するケースも少なくありません。

最近のルーターの多くは、インターネット経由で自動的にファームウェアを更新する機能を備えています。しかし、念のため設定画面を確認し、手動で更新をチェックしてみることをお勧めします。更新方法の詳細は、お使いのルーターの取扱説明書やメーカーのウェブサイトで確認してください。

それでも改善しない場合は?

上記の対策をすべて試しても状況が改善しない場合、原因は他にあるかもしれません。

  • 接続端末側の問題:ルーターではなく、スマートフォンやパソコン側に問題がある可能性も考えられます。特定の端末だけが繋がりにくい場合は、その端末の再起動や、OS・ドライバーのアップデートなどを試してみましょう。
  • インターネット回線自体の問題:そもそも大元であるインターネット回線に障害が発生していたり、速度が遅かったりする可能性もあります。一度、有線LANでパソコンを直接ONU/モデムに接続してみて、その状態で速度測定サイトなどを利用し、回線本来の速度が出ているか確認してみるのも有効です。
  • ルーターの性能不足や寿命:契約している光回線の速度(例:1Gbps)に対して、ルーターの性能が著しく低い場合(例:100Mbpsまでしか対応していない古い機種など)、ルーターがボトルネックになって速度が出ません。また、無線LANルーターの寿命は一般的に4〜5年程度と言われています。長年使っているルーターの場合、内部の部品が劣化して性能が低下している可能性も考えられます。

第5章:超重要!無線LANのセキュリティ対策

無線LANはケーブルがない分、非常に便利ですが、その手軽さの裏にはセキュリティ上のリスクが潜んでいます。電波は壁を越えて、家の外まで届く可能性があります。何の対策もしていないと、悪意のある第三者にネットワークをタダ乗りされたり、もっと深刻な被害に遭ったりする危険性があるのです。この章では、なぜセキュリティ対策が必要なのか、そして具体的に何をすれば安全にWi-Fiを使えるのかを、詳しく解説します。

なぜセキュリティ対策が必要なのか?

セキュリティ設定がされていない、あるいは甘い無線LANは、いわば「鍵のかかっていない家」と同じ状態です。誰でも自由に出入りできてしまうため、以下のようなリスクに晒されることになります。

  • 通信のタダ乗り(無断利用):近所の人に勝手にWi-Fiを使われてしまうことです。自分の契約しているインターネット回線を他人に使われると、その分、自分の通信速度が遅くなってしまいます。
  • 通信内容の盗聴:暗号化されていない通信は、専門的なツールを使えば簡単に内容を傍受(盗み見)できてしまいます。例えば、パスワードのかかっていないWebサイトで入力したIDやパスワード、メールの内容などが丸見えになる危険性があります。
  • 個人情報の漏洩:ネットワークに侵入されると、パソコンやスマートフォンに保存されている写真や文書、個人情報といったプライベートなファイルにアクセスされてしまう可能性があります。
  • 犯罪の踏み台にされる:これが最も深刻なリスクのひとつです。あなたの家のWi-Fiが、第三者によってウイルスをばらまいたり、他人を誹謗中傷したり、サイバー攻撃を仕掛けたりといった犯罪行為の中継地点として悪用されてしまう可能性があります。この場合、犯人を特定するのが難しく、あなたが疑われてしまうことにもなりかねません。

「自分は狙われるような情報なんて持っていないから大丈夫」と思うのは大きな間違いです。攻撃者は、特定の個人を狙うのではなく、無防備なネットワークを無差別に探しています。自分の身を守るため、そして知らず知らずのうちに加害者にならないためにも、しっかりとしたセキュリティ対策は、無線LAN利用者の義務と言っても過言ではありません。

暗号化方式の種類と選び方

無線LANのセキュリティの根幹をなすのが「暗号化」です。暗号化とは、通信データを第三者には意味のわからないグチャグチャな文字列に変換して、盗み見られても内容を解読できないようにする技術です。この暗号化にはいくつかの「方式(プロトコル)」があり、それぞれに安全性のレベルが異なります。

現在主に使われている暗号化方式には、WEP、WPA、WPA2、WPA3があります。

暗号化方式 安全性 解説
WEP × (危険) 非常に古い規格で、現在では数分で解読できる深刻な脆弱性が見つかっています。絶対に設定してはいけません。もしこの設定になっている場合は、すぐに他の方式に変更してください。
WPA △ (不十分) WEPの弱点を改良した後継規格ですが、これも現在では脆弱性が見つかっており、安全とは言えません。WPA2以上が使えるなら、そちらを選ぶべきです。
WPA2 ○ (安全) 長年にわたり標準的に使われてきた、信頼性の高い規格です。TKIPとAESという2つの暗号化アルゴリズムがありますが、より強力な「AES」を選びましょう。現在でも多くの機器で利用されており、最低限この設定にすることが推奨されます。
WPA3 ◎ (非常に安全) 現在最も新しい、最も強力な暗号化方式です。WPA2よりもさらにセキュリティが強化されており、パスワードの安全性が向上し、公共のWi-Fiスポットなどでの安全性も高まっています。ルーターと接続機器の両方が対応しているなら、迷わずWPA3を選びましょう。

お使いのルーターがどの暗号化方式に対応しているかは、設定画面で確認・変更できます。必ず「WPA3」または「WPA2-AES (WPA2-PSK AESとも表記されます)」に設定されていることを確認してください。

今すぐできるセキュリティ強化策

暗号化方式の設定に加えて、さらにセキュリティレベルを高めるために、ぜひ実践してほしい対策がいくつかあります。

パスワード(暗号化キー)を複雑にする

Wi-Fiに接続するためのパスワード(暗号化キーや事前共有キーとも呼ばれます)は、家の鍵と同じくらい重要です。ルーターの本体側面や底面に初期設定のパスワードが記載されていますが、可能であれば、これを自分自身で設定した、より強力なものに変更することをお勧めします。

強力なパスワードの条件

  • 長さ:できるだけ長くする(最低でも12文字以上、できれば16文字以上が望ましい)。
  • 複雑さ:英大文字、英小文字、数字、記号(!@#$%^&*)をすべて組み合わせる。
  • 推測されにくさ:名前、誕生日、電話番号、辞書に載っているような簡単な単語(password, 12345678など)は避ける。

長く複雑なパスワードは入力が大変ですが、一度設定してしまえば頻繁に入力するものではありません。安全のため、推測されにくい強力なパスワードを設定しましょう。

管理者パスワードを変更する

Wi-Fiに接続するためのパスワードとは別に、無線LANルーターの設定画面にログインするための管理者用パスワードがあります。初期設定では「admin」や「password」、「user」といった簡単なものが設定されているか、あるいはパスワードなしで入れてしまう場合もあります。

この管理者パスワードが初期設定のままだと、ネットワークに接続した第三者に簡単に設定画面へ侵入され、Wi-Fiパスワードを変更されたり、設定を勝手に書き換えられたりする危険性があります。これも必ず、推測されにくい独自のパスワードに変更しておきましょう。

SSIDステルス機能は気休め?

SSIDとは、Wi-Fiのネットワーク名のことです。ルーターには、このSSIDを周囲から見えないように隠す「SSIDステルス」や「ANY接続拒否」といった機能があります。一見、セキュリティが高まるように思えますが、専門的な知識を持つ攻撃者にとっては、隠されたSSIDを見つけることは容易です。そのため、この機能は「気休め程度」の効果しかないと考えるのが一般的です。むしろ、新しい機器を接続する際に手動でSSIDを入力する必要があり不便になる、などのデメリットもあります。この機能に頼るのではなく、強固な暗号化と複雑なパスワードを設定することの方がはるかに重要です。

MACアドレスフィルタリング

これは、事前に登録した機器の「MACアドレス(マックアドレス)」という、個別の識別番号を持つ機器しかWi-Fiに接続できないようにする機能です。許可した機器以外はシャットアウトできるため、非常に強力なセキュリティ対策に見えます。

しかし、これも万能ではありません。MACアドレスは偽装することが可能であり、本気で侵入しようとする攻撃者には突破される可能性があります。また、友人が遊びに来た時や、新しいスマホに買い替えた時など、新しい機器を接続するたびに、ルーターの設定画面でMACアドレスを登録する手間が発生し、非常に面倒です。利便性とのトレードオフになるため、家庭で利用するには少し過剰な対策かもしれません。

ファームウェアを常に最新に保つ

第4章でも触れましたが、これはセキュリティの観点からも極めて重要です。ソフトウェアには、時にセキュリティ上の欠陥(脆弱性)が見つかることがあります。メーカーは、この脆弱性を修正するための更新プログラムとしてファームウェアを配布します。ファームウェアを更新せずに古いまま放置していると、その弱点を突かれてネットワークに侵入される危険性が高まります。ルーターの自動更新機能は有効にしておき、定期的に手動でもチェックする習慣をつけましょう。

第6章:無線LANルーターの「選び方」の考え方

ここまで無線LANの様々な知識について解説してきました。この章では、それらの知識を総動員して、「じゃあ、実際に自分にはどんな無線LANルーターが必要なのか?」を考えるための、具体的な思考プロセスを解説します。自分に合った製品を見つけるための「物差し」を手に入れましょう。

【注意】この記事では特定の商品をおすすめしません!

本題に入る前に、改めてこの記事のスタンスを明確にさせてください。この記事では、特定のメーカーの特定の製品名を挙げて「これがおすすめです!」ということは一切いたしません。 なぜなら、最適な無線LANルーターは、使う人の住環境、利用する機器、インターネットの使い方によって全く異なるからです。Aさんにとっては最高の製品が、Bさんにとってはオーバースペックだったり、機能不足だったりすることは十分にあり得ます。

ここでお伝えしたいのは、カタログスペックの数字の羅列に惑わされることなく、ご自身の使い方や環境に照らし合わせて、必要な性能や機能を見極めるための「考え方」そのものです。この章を読み終える頃には、ご自身で判断基準を持って、製品情報を比較検討できるようになっているはずです。

STEP1:利用環境を把握する

まず最初に考えるべきは、「どこで使うのか?」という物理的な環境です。

  • 住居のタイプと広さ:ワンルームや1Kのような単身者向けの部屋でしょうか? それとも、60〜80平米ほどのマンションでしょうか? あるいは、2階建てや3階建ての戸建て住宅でしょうか?
  • 間取りと材質:部屋数はいくつありますか? 壁の材質は木造ですか、それとも電波を通しにくい鉄筋コンクリートですか?

この利用環境によって、必要とされる電波の「強さ」や「カバレッジ(届く範囲)」が決まります。

例えば、ワンルームや1LDK程度の広さであれば、エントリークラスからミドルクラスの一般的な無線LANルーター1台で十分にカバーできる可能性が高いです。しかし、3LDK以上のマンションや、複数階にまたがる戸建て住宅の場合、1台のルーターではどうしても電波の死角が生まれやすくなります。そのような環境であれば、強力なハイパワータイプのルーターを選ぶか、あるいは第3章で解説した「メッシュWi-Fi」の導入が有力な選択肢となってきます。

STEP2:接続する機器の台数と種類を考える

次に、「何台の機器を、どんな風に使うか?」を考えます。

  • 接続する総台数:ご家庭でWi-Fiに接続する機器は全部で何台ありますか? スマートフォン(家族の人数分)、パソコン、タブレット、テレビ、ゲーム機(Nintendo Switch, PlayStationなど)、スマートスピーカー、ネットワークカメラ、IoT家電(照明、エアコン、ロボット掃除機など)… すべて数え上げてみましょう。
  • 主な利用用途:それぞれの機器で、主に何をしますか? 4K動画のストリーミング視聴や、一瞬のラグも許されないオンラインゲームのように、通信に高い負荷がかかる使い方をしますか? それとも、Webサイトの閲覧やSNS、メールのチェックといった比較的軽い使い方が中心でしょうか?

接続台数が10台を超えるような環境や、家族が同時に動画視聴やゲームをするような場面が多いのであれば、第3章で解説した「MU-MIMO」「OFDMA」といった、多数の機器が同時接続しても速度が落ちにくい技術に対応したルーター(主にWi-Fi 6以降の規格)が非常に効果的です。

逆に、接続台数が少なく、利用用途も軽いものが中心であれば、そこまで高性能な機能は必要ないかもしれません。

STEP3:契約しているインターネット回線の速度を確認する

意外と見落としがちなのが、大元であるインターネット回線とのバランスです。

  • 契約回線の種類とプラン:ご自宅のインターネット回線は、光回線ですか? そのプランの最大速度はどれくらいでしょうか(例:1Gbps、10Gbpsなど)。それとも、ケーブルテレビやその他の回線でしょうか?

無線LANルーターには、それぞれ対応できる回線速度の上限があります。例えば、せっかく「最大10Gbps」の超高速な光回線を契約していても、ルーターのWANポート(インターネット回線と繋ぐポート)が1Gbpsまでしか対応していなければ、通信速度は最大でも1Gbpsまでしか出ません。ルーターがボトルネックになってしまい、回線の性能を全く活かせないのです。

ご自身の契約している回線プランの速度を確認し、少なくともその速度に対応できる性能を持ったルーターを選ぶことが重要です。将来的に高速なプランへの変更を考えているなら、先を見越してより高性能なポートを持つルーターを選ぶというのも一つの考え方です。

STEP4:必要なWi-Fi規格を決める

次に、どの世代のWi-Fi規格が必要かを考えます。これは、お使いのスマートフォンやパソコンがどの規格に対応しているかと、将来性をどう考えるかによって決まります。

  • 手持ちの主要なデバイスの対応規格:お使いのスマートフォンやノートパソコンが対応しているWi-Fi規格を調べてみましょう。「機種名 Wi-Fi規格」などで検索すれば、簡単に見つかります。
  • 将来性:これから2〜3年、あるいは4〜5年と使っていく中で、新しいデバイスに買い替える予定はありますか?

もし、お使いのiPhoneやAndroidスマホ、パソコンが「Wi-Fi 6」に対応しているのであれば、ルーターもWi-Fi 6対応のものを選ぶことで、その性能を最大限に引き出すことができます。Wi-Fi 5のルーターでも接続はできますが、宝の持ち腐れになってしまいます。

さらに、最新のハイエンドスマートフォンやノートパソコンをお持ちで、それらが「Wi-Fi 6E」に対応しているなら、Wi-Fi 6E対応ルーターを選ぶことで、空いている6GHz帯を使った超快適な通信を体験できる可能性があります。

「今はまだWi-Fi 5の機器しか持っていないけれど、近々スマホを買い替える予定がある」という場合は、将来を見越してWi-Fi 6対応のルーターを先行して導入しておく、というのも賢い選択です。ルーターは一度設置すると数年間は使い続けるものですから、少し先の未来を見据えて選ぶ視点も大切です。

STEP5:必要な機能をチェックする

最後に、これまで解説してきた付加機能の中から、ご自身の環境にとって特に重要だと思われるものをリストアップします。

  • ビームフォーミング:特定の端末に電波を集中させる機能。今や多くのルーターに搭載されていますが、念のため確認しておくと安心です。
  • MU-MIMO / OFDMA:複数台同時接続時の安定性を高める機能。接続台数が多い家庭では必須と言っても良いでしょう。
  • メッシュWi-Fi:広い家や階数の多い家で、Wi-Fiの死角をなくしたい場合に検討します。
  • セキュリティ機能:最新の暗号化方式である「WPA3」に対応しているかは、安全性の観点から非常に重要なチェックポイントです。

【まとめ】選び方のチェックリスト

さあ、これまでのステップをまとめて、あなただけのチェックリストを作ってみましょう。

  1. 住環境は?(例:マンション3LDK、戸建て2階建て → メッシュも検討)
  2. 接続台数は何台?(例:15台以上 → Wi-Fi 6のMU-MIMO/OFDMAが欲しい)
  3. 主な用途は?(例:家族で4K動画やゲーム → 高性能モデルが必要)
  4. 回線速度は?(例:光1Gbps → 1Gbps以上のWANポートが必要)
  5. 手持ちの端末は?(例:iPhone 14, PCもWi-Fi 6対応 → ルーターもWi-Fi 6以上が必須)
  6. セキュリティは?(例:安全第一 → WPA3対応は譲れない)

このリストの答えが、あなたが無線LANルーターを選ぶ上での「コンパス」になります。この基準を持って製品情報を見れば、たくさんの製品の中から、ご自身のニーズに合った、過不足のない選択ができるはずです。

まとめ

今回は、無線LAN(Wi-Fi)について、その基本的な仕組みから、規格や専門用語の解説、トラブルシューティング、セキュリティ対策、そして選び方の考え方まで、幅広く、そして深く掘り下げてきました。

この記事には、特定の商品のおすすめは一切ありません。しかし、最後までお読みいただいたあなたは、もう広告や店員さんの言葉を鵜呑みにするのではなく、ご自身の知識と判断基準で、自分や家族にとって本当に必要なWi-Fi環境がどのようなものかを見極める力を手に入れたはずです。

無線LANは、正しく理解し、適切に設定し、環境を整えることで、私たちのデジタルライフを驚くほど豊かで快適なものにしてくれます。速度が遅い、不安定だといった日々の小さなストレスから解放されるだけで、仕事や学習の効率が上がり、趣味の時間ももっと楽しめるようになるでしょう。

この記事が、あなたの快適なインターネットライフを実現するための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。ぜひ、ここで得た知識を活用して、ご自宅のWi-Fi環境を見直し、最高のネットワークを構築してみてください。

この記事を書いた人
にゃんこCPU

パソコンとガジェットをこよなく愛する、自称“性能厨”です。
10代からPCに触れはじめ、気がつけば組み立てやカスタマイズが日課に。
スペックやコスパを見極めるのが得意。
「難しいことは簡単に、でも大事なことはしっかり伝える」をモットーに、初心者にもわかりやすい解説を心がけています。

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